~音楽と自然の力につつまれて~ e.w.Hanaの記録

幸せになりたい!幸せを分かち合いたい!言葉ではうまくコミュニケーションが取れないけれど 音楽はできる青年との暮らしの中で、 目の前に起こる出来事をどのように受け止めるか 自然の力や音楽の力に癒されながら模索していく日々の記録です。

量が質を変える

『量が質を変える』この言葉には、色々なことが当てはまると思いますが、
この‟質”がグレードという意味の質である次元では
この言葉はあまり響いてきません。
沢山訓練すれば勉強や仕事なら当然覚えるし、芸事なら上手になるのは
まあ、当たり前という感覚です。

ですが、その‟質”が
もっと変わりにくいもの、または変わることを予見できないこと
つまり ‟性質”や‟本質”まで変えてしまうことがあるのだということを見た時、
この言葉の本当の意味を実感します。

今日はそんな意味で、この言葉をかみしめていました。

学校も卒業して大きくなったmasaが、
いまだに続ける公文のプリントを通してつかみつつある兆しについてです。

公文を始められる方には、中1までにI(中3レベル)教材を仕上げておく、などと
目標を決めてこなす方もいらっしゃるようですが、
小学校に入った時点で、鉛筆を持ったこともなかったmasaが公文を始めた最初から
ゴールや目的を決めていたわけではありません。
ただ、言葉を介して物事を理解することが難しかった彼にとっては
同パターンの問題を繰り返しするスタイルの学習は性質に合っていたこともあって、
初めて3年目で、単純計算だけは健常のお子さんと肩を並べてできるようになったことを
奇蹟だと喜んだこともありました。
そして年を追うごとに、単純なことであれば人の数倍の積み重ねで、できるようになる、
という確信も持てるようになりました。

つい最近までは、そこまでが公文の成果だと思っていました。

その積み重ねのお蔭でルートの計算も、二次関数も、因数分解もできるように
なりました。彼の発達検査をしたことのある先生なら、これも信じがたいレベルの学習だと
感じることでしょう。
実数の計算を経て、このような計算問題を経て、もしかしたら、やっと
数学をしてきたことが彼の人生に役立つところに届くかもしれないと思い始めています。

今わかっていること、そこからわかること、・・と順序だてて
思考を組み立てていけばいいんだという安心感を、数学は与えてくれます。
人生でぶつかってくる問題は、自分の持っている駒で解決するしかありません。
そういう時に、
分かっていることと、自分の知識を組み合わせて、正解の存在する問題を解く
という経験の積み重ねは、大きな問題にぶつかっても大丈夫と落ち着ける自分を
後押ししてくれると思います。腰を据えて解決の糸口を探すようになったら大したものですが
そこまでいかなくても、物事を順序立てて考える習慣を身に着けることで
周りを見渡す余裕が育まれるのではないかと思います。
今、masaが取り組むプリントにはそのような期待をかけられるようになりました。

(ちょっと長いので休憩です。はい、おやつ(*^-^*))
            

ですが、空間認識、量的な認識、イメージングについては
全く諦めていた、というのが正直なところです。
             (masaの持つ障害の特徴的な部分ゆえに)。
例えば、引き算の説明に使われる、線分図。
全体が6でこっちが4だから、残りは・・みたいな。
こういう図になってしまうと、本当に分らなくなってしまうのです。
長方形の対面同士が同じ長さ、とか。こっちの辺が6だから、対面側のこの辺も6
ということが自然に分らない。
目に見えている図形の見え方が違うみたいなのです。
いえ、正確に言うと、わからなかったのです。
ですから、三平方の定理を覚えても、三角形がひっくり返るとわからないとか、
諦めなければならないところかなと思っていました。

可笑しいですよね。
ルートの混ざった数字で三平方やっていて、その中の線分図の引き算が理解できないなんて。
小学校1年生の引き算のレベルです。
ところが、
これがわかり始めたんです。
ずっとわからなかった、この引き算の図が。ひっくり返った三角形が。

小1の算数と二次関数と三平方、全然相関関係が無いように見えますが、
彼にとっては、ここまでの算数的経験値をもってみて初めて
小学1年で出会っていた線分図が理解できる扉が開いたのです。

STAP細胞ではないけれど、どこで‟わからない性質”が変わるのかは
わからないけれど、刺激を続けていれば‟不変性のように思われている‟性質”も
変化する、ということがあるのだと、知りました。

彼にとって最も難しいと思っていた空間認識に兆しが見えてきたことで
社会生活における掲示板や広告などの理解にも、双方向があるものの理解にも
扉が開いていくかもしれません。
‟量が質を変える”・・・驚きとともに、夢を広げてくれる言葉です。

ほんのわずかでも前に進んでいることを感じられる1日に感謝します。
満月様、ありがとうございます。