美智子さまの想い
いつも想うのですが、皇后美智子さまは、
若くして皇室に嫁がれるまでの短い間に、
いったいどのようにして奥深い教養と洞察力を磨かれたのでしょう。
日本人で初めてアンデルセン賞を受賞された まどみちお氏の
『やぎさんゆうびん』(詩集)を英語に翻訳して世界に紹介されたのは
皇后さまだったそうです。
この詩集にあるうたのように、私たちにもともとあったはずの
無垢な心の世界に呼び戻してくれる本に携わられた、というのも
美知子さまの心の中にある、大切なことが、一貫して強く築かれている
からこそのように思えます。
美智子さまは、98年に行われた英語での講演(於:国際児童図書評議会世界大会)
のなかで
「・・今思うのですが、一国の神話や伝説は正確な史実ではないかもしれませんが、
不思議とその民族を象徴します。」と触れられています。
それぞれの民族が持つ神話や伝説を教育から奪いさるということは
その民族の根っこを引き抜くこと・・・・。
美智子さまご自身は、戦前に古事記と日本書紀のなかの物語を子供向けに再話された
ご本をお父様からプレゼントされ読んでいたから良かった、と
講演でお話したかったようなのです。
なぜなら、そのあと米軍の占領下での教育からは歴史教育から
神話や伝説が削除されてしまった、という事実を経験なさったからでしょう。
(この部分は、実際の講演の原稿からは削除されていました。
しかし、 講演前の原稿の全文が『文芸春秋』に公表され、私たちに
見えるようにしてあったのだそうです。)
繰り返しになりますが、‟一民族の滅亡は歴史教育の中からその民族の神話や伝説を
消し去ること” と歴史学者トインビーは断言しています。
今、外国人に賞賛される‟日本らしさ”や日本人ならではの”あ・うん”の
呼吸が、SNSの発展などを介して浸食されつつつある危うさは
この国を形成してきた文化を継承する大切さを心の底に留める
教育が、戦後を境に軽んじられてきたためではないかと、
しばし、考えてみなければならない気がします。
「皇室は祈りでありたい」「心を寄せ続ける」とおっしゃる
皇后さまの心の形を、受け止める日本人の一人になりたいと思いました。